『道徳という名の少年』ー桜庭一樹ー を、読みました。

なんだか最近あちこち走り回っていて本を読めていませんでしたが、2日前くらいに読み終わった本のお話。

桜庭一樹先生の『道徳という名の少年』です。

最近、一冊読み終わったらその作家さんの他の本を買うというプレイをしているのですが、基本kindleでまず探すので、その中から気になったタイトルの本がこれだった、という感じで。

今回の購入は全く事前情報無しのジャケ買いでございます。

 

例のごとくネタバレがございますので、未読の方はご注意くださいませ……。

 

町いちばんの美女が雪の降る晩に赤子を生むところからお話は始まる。

町いちばんの美女の子には父がなく、それは罪深く、町の秩序を脅かす出来事出会ったため、人々は恐れおののく。

美女は初めの子に「1」という名をつけ、つぎつぎに生んだ父のない子に「2」「3」と名をつけていき、4人目の子には「悠久」という名をつけた。

出来事を恐れながら見ていた町の人々は、「悠久」という名は、これで打ち止めということだと解釈し、安堵した。

4人の姉妹は、まったく父の面影がなく、美女に瓜二つで、また4姉妹は少しずつ個性はあるながらもそっくりだった……。

その4姉妹と美女の母、そして後に生まれる4姉妹の異父弟をめぐる物語「1,2,3,悠久!」

 

そして、4姉妹の末の妹と異父弟、その間に生まれた子ジャングリンと向かいの家に住む女の子を巡る、奇妙な愛の話「ジャングリン・パパの愛撫の手」

 

ジャングリンと向かいの家の女の子の間に生まれた子ジャングリーナを巡る孤独な話「プラスチックの恋人」

 

ジャングリーナの子ジャンを巡る悲しく純粋な話「ぼくの代わりに歌ってくれ」

 

そしてラストは、ジャングリーナと親戚かもしれないミミとその友達のクリステルを巡る喪失の話

「地球で最後の日」

 

この本は、桜庭先生が、まったく別の媒体にそれぞれ発表した作品を一つにまとめたものなのだそうです。

初めの「1,2,3,悠久!」の時点でおおまかな構想はあったようなのですが、それを元に、その後全く別々のメディアの執筆依頼に対して他の4つの作品を書き発表し、それがのちに短編連作ともなるこの不思議な本に仕上がったのです。

という話を聞くまでは、狙って書いたのだろうなと思っていたのですが、それぞれが時期を同じくせず、いろんな場所で展開していた作品群だとは……。

 

確かに、それぞれは独立した作品として十分に読むことが出来ます。

ただ、続けて読むと、一つの血の繋がった一族の年代史として、非常に奥深い表情を見せる物語に仕上がっているのです。

一番最初の母「町いちばんの美女」は奔放に生き4姉妹を生み、その4姉妹も奔放に生きていく。

4姉妹は一度皆娼婦となり、末の妹は血の繋がった弟と子をもうける。

それはすべて「道徳」に反する行いであり、彼女たちは自分たちに足りないものは何だっのかと話し合い、その名を末の妹と弟の子に名付けるのです。

「ジャングリン=道徳」と。

一連の年代史は、一族の血と「道徳」という名の呪縛からなされる物語としても読むことができるのかなぁと思いました。

同じようなことが巻末の榎本正樹さんの解説にも書いてあるのですが。

 

文体も独特で、説話集や昔話を読んでいるような気分になります。

簡潔な語り口や典型的な物語構造を持って書かれており、さくさくと読めるのですが、とても濃い。

行間に詰まっている情報がとても多くて、それがテンポよく頭に飛び込んでくるので、なかなかに脳みそがびっくりする作品となっていると思います。

 

桜庭先生の作品で拝読したのは『GOSICK』『私の男』、『推定少女』、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『少女には向かない職業』です。

その中で、私は「父」というものを強く感じていたのですが、この本は「母」の物語だなぁと思いました。

巻末に「インタヴュー 桜庭一樹クロニクル 2006-2012」というものが収録されていて、この6年間の間に榎本正樹さんが桜庭先生に行ったインタビューが大量に収録されていました。

どれくらいというと、ほんの半分くらいが実はこの記事でした……笑

そうとも知らず、まだ読んでいない作品のインタビューまで読んでしまったのですが、どうやら桜庭先生は「父」よりも「母」を多く描いているらしいということが分かってきました!

なので、これまでの私の認識は見当違いだった可能性が大で……若干今恥ずかしいのですが、素直な感想として大事にしてあげるとして……。

この『道徳という名の少年』は桜庭先生の「母サーガ」の一つとして読んで見ると良いと思います。

とにかく早く『少女七竈と七人の可愛そうな大人』を読まないとな、と思っております。

 

ちなみに「インタヴュー 桜庭一樹クロニクル 2006-2012」は内容がかなり濃いので、作品を読んでから読んだほうが先入観なく作品に触れられると途中で気付き、先送りにしました。

桜庭先生の作人に対する生の声が聞きたいあなたにも、是非オススメの本です。

 

 

 

 

 


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