『赤×ピンク』-桜庭一樹- を、読みました。

明日から映画が公開される桜庭一樹さんの『赤×ピンク』を先ほど読了しました。

久しぶりの本ブログなのですが、相変わらず書評の体を成していないネタバレスタイルで書いていきたいと思います。
未読の方はご注意を……。

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六本木の廃校で夜な夜な行われるキャットファイト、その興行に身を投じる少女達……。

3人の少女達一人ひとりの視点を中心とした、3つの章で構成されています。
その3人の少女は互いに同じキャットファイト「ガールズブラッド」の出演者。

時系列は順番に流れていて、各章で同じ場面が描かれていたりするのですが、章の主人公である女の子の視点で語られるので、片方の子の章では何気ないシーンだったのに、もう片方の子の章では実はそのとき悶々とこんなことを考えていました!というようなことが分かる構成で、とても面白かったです。

普通物語は、主軸となる語り部の視点で語られるので、一面しか見えてこないのですが、本著はそれぞれの少女の見ている側面が集まって物語全体の輪郭が見えてくるような作りでした。

 

それぞれの少女が闇を抱えていて、みんなが、その闇を振り払う方法を知らない。
でもガールズブラッドの檻の中で血を流して戦っているひとときだけは、その闇から開放される。
まるで、格闘技にすがるように、ハマっていく。

最後はそれぞれが、「次」へ進んだなぁ、と思いました。
何かを見つけたように、気づいたように、踏み出したように、闇から半歩出る。

半歩、なんですよね。
全てが解決したわけではない。でも、確実に半歩はその闇からみんな前に進む。

その先に何が待ち構えているかわからない。
でも、行き先が分からなくてうずくまっていた闇の中から、なんとなくあっちなのかな、という行き先めいた光を見つけて、そちらへ進んでいく。

そういう意味で、みんなは救われているのかな、と思いました。

 

まゆ、ミーコ、皐月という三人の少女が登場します。
少女の定義、正直私も曖昧ですが、少女だな、と思います。
みんな大人じゃないから。

まゆはガールズブラッド上では14歳という設定を与えられていますが、彼女は実は21歳。
そのまゆから物語は始まりますが、彼女は最後、ガールズブラッドを去ってしまいます。

でもそれは「檻」という呪縛からの開放なんだなと思いました。
小さい頃から閉じ込められ続けていた「檻」。

自分の力で出れるはずなのに、出れなかったそれの外に出れた彼女は、結局また自分でガールズブラッドという檻に戻っていく。

「居心地が悪いけれどここでしか生きていけない気がする」とまでいう彼女が、最後は自らの足で檻から逃げていく。

自分の力で檻から出るのです。

ミーコは19歳。

「人に合わせる、人の期待に応える」ということに執心した結果、相手が何を望むか手に取るように分かり、完璧にそれに合わせられる子になった。

そうしているうちに家族を失い、自分で欲するということを失ってしまった。
自分がどうしたいのか、まったくすっぽり抜けてしまっている人間になってしまった。

彼女はまゆがいなくなったことを機に、そんな自分について考え始める。
そして選んだ道が「客の物語を完璧に描く」ことができていたSMクラブを辞め、「客が喜ぶ試合運びに専念していた」ガールズブラッドで、自分の好きなように戦ってみる。

その小さいかもしれない一歩で、親から捨てられた15歳の夜から、開放され、生きている感覚を取り戻していくのです。

皐月も19歳。
心が男であることを誰にも言えず、そしてそれが原因で家を出る。
彼女の徹底的な女嫌いも、帰りたいけれど実家に帰れない理由も、全てが逆説的で、自分が男性であることを誰にも打ち明けられずにいた気持ちがこじれてしまっているから。

ただ、千夏という女性の出現により、皐月の心は溶けていく。
自分が男であることを見破られ、そして全てを打ち明けることで、人生をやり直そうと、思う。

家に、帰ろうと、思う。

蜃気楼、とまで言っていた女性を初めて腕の中に抱きながら。

愛されたかったまゆ。
愛することも愛し方も理解できないミーコ。
愛したくても愛せなかった皐月。

これは、それぞれの愛の物語でもあるなぁ。なんて。

そして一人だけ年齢的に大人であるまゆだけが、ガールズブラッドから出て行ったことは、何かを意味しているんだろうか、と今考えています。

みんな、「普通」から比べると変わった人生を歩んできた娘達だけれど、だから闇があるということでもない気がしました。

これは本当に、「女の子」の話で。
全編に濃密なまでに「女の子」が詰まっているお話でした。
「女の子の闇」のお話なんじゃないかな、と今は思っています。

まぁ皐月は男なんですけどね。笑
でも、「女の子」という殻に入っている彼女のお話は、やっぱり。
女の子、が漂っています。

これがどんな風に映像化されるのか楽しみです。
プロモーションを見た限りでは、おそらくかなりオリジナル要素が入ってくるんだろうなと思うので。

どんな「救い」があるのか、女の子たちがどうやって「闇」から出て行くのか、しっかり見てこようと思います。


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