もう一ヶ月以上も経ってしまいましたが……。
ゲンロンカフェで開かれた『艦隊これくしょん』がお題のイベントに行ってきたお話をしたいと思います。
さやわか式☆現代文化論 第一回「『艦隊これくしょん』の真実!」
というイベントで、登壇者はさやわか×米光一成×中村桜(敬称略)です。
【イベント概要】
SNS上やニュースサイトで突如話題になったオンラインゲーム「艦隊これくしょん」。
その大ヒットの理由と、新たなコンテンツ論・キャラクター論の可能性について、『僕たちのゲーム史』『AKB商法とは何だったのか』などの作者・さやわかが語り尽くす!
ゲストは、ゲームクリエイターであり『ぷよぷよ』の開発者でもある米光一成と、「艦これ」愛には絶対の自信を持っている声優・中村桜!
制作者的な視点と女子的目線を加えることで、議論が白熱すること必至!!
「艦これ」は紛れもなく2013年を代表するコンテンツであり、ポップカルチャーにおける台風の目だ。
9月末時点でプレイヤー数は90万人を超え、2014年夏にはテレビアニメ化されるほか、PS Vitaへの移植も決まっている。pixivなどを利用した二次創作も盛んだし、Twitterなどでも、ぜかまし中破画像などを熱心に語る紳士がそこかしこに見られる。
そこにはゲーム、キャラクター、ソーシャルメディア、二次創作文化、擬人化など様々な要素が含まれており、これまでのポップカルチャー批評の視点からも重要な作品となる。
だが、そこに旧来のコンテンツと異なる可能性は秘められているのか?
アイドルマスター、ひぐらし、東方project、初音ミクといったゼロ年代を彩るコンテンツを超える何かが存在するのか!?
忽然と現れた艦娘たちの中にその真価を見出すことで、2010年代のカルチャー批評は今こそ新たな見地に到達する!
Peatix イベント詳細ページより引用
……正直、記憶のほうが曖昧すぎるので、本当に印象に残った部分のみになってしまうかと思います。
鉄は熱いうちに打たないとダメですね……。
◎登壇者ってどんな人だったの?
【さやわか】さん
まずこのイベントのメイン、さやわか氏(@someru)についてご紹介を。
さやわかさんは、Wikipediaによると、「日本のライター、物語評論家」ということらしいですが、最近だと『AKB商法とは何だったのか』という著書が記憶に新しいところです。(綾瀬はまだ未読です、、、申し訳ありません、、、)
これまでWeb上で様々なサイトを運営されてきた方で、さやわか、というのもその中の一つの名義でしかないのだそうです。
現在は雑誌を中心に執筆をされているそうで、ジャンルはアイドル、小説、漫画、映画、音楽、ゲーム、etc…で、「物語を読み解けるならば対象にはこだわらない評論姿勢を見せている。(Wikipediaより)」とのことで、ありとあらゆるところに転がっている「物語」に興味がある私としては、非常に気になる方です。
【米光一成】さん
次に、米光一成氏(@yonemitsu)のご紹介です。→Wikipedia
ゲームクリエイターとして、あの『ぷよぷよ』を生み出した方です。
現在は立命館大学映像学部の教授もなさってるんですね……!
最新の著書は『男の鳥肌名言集』で、いわゆる偉人の名言でなく幅広いジャンルの人物を取り扱っているそうです。
イベント当日はいくつか紹介してくれましたが、なかなか面白そうでした!
【中村桜】さん
最後に中村桜さん(sakura_n)です。→Wikipedia
声優さんなのですが、この日は「艦これ愛なら誰にも負けない」というポジションでの登壇でしたが、海上自衛隊訓練支援艦「てんりゅう」の一日艦長をつとめたり、とてもご立派なミリタリー趣味もお持ちで、会場にふさわしい人材でした!
ちなみに艦これでは声優はやってないという……ご本人の自虐ネタもはさみつつ、今後の参戦が期待されます。
◎イベント本編
【さやわかさんからスタート】
少々遅れて到着してきた私が、会場に入るとすでにさやわかさんがマシンガントークを炸裂しておりました。
プロジェクターで簡単なパワポっぽい資料を表示しながら次々に持論を展開していくさやわかさん。
正直この時点で、「今日はこういうことを話しますよ」という触りのところを話しているんだと思いましたが……後から気付いたらイベントのメインどころはすでにそこだった模様。
時間が1時間半のイベントだったんです。なので、結構早足で話していたんですね。
私がいくゲンロンカフェのイベントは、大体終電間際までずれ込むので、そういうものだと思ってましたが、きっと東浩紀さんがいたからなんでしょうか。
というわけで、ちゃんと聞いてましたが、ちゃんと頭に入っていない私でした……。
【艦これがバズったタイミング】
そんな中で印象的だったのは「艦これはいつバズったのか?」という話題です。
折れ線グラフを表示しながらのトークでしたが、最初に艦これがバズったのは「新規登録が抽選制になった8月」なんだそうです。
艦隊これくしょんは、ユーザが運営の予想をはるかに上回る形で増加し、今年8月21日以降は、サーバ負荷軽減のため、日々の抽選を通った人のみが新規登録できるようになりました。
要は、じゃあやってみますか!といってアクセスしてもゲームを始められないことがあるということです。
(一度新規登録したら、以降は水曜日の定期メンテナンス以外はいつでもプレイ可能)
一見ネガティブなニュースにも聞こえるのですが、これが「艦これが流行っててヤバイらしい」という感じで拡散していったんでしょうね。
行列のできるお店と一緒の心理だし、やれないと言われるとやってみたくなるのが人間ですもんね。
ちなみに、もう一回バズったタイミングがあったんですが……忘れてしまった……。
「艦これは入れないらしい」が一般的な認識だというのは、私も経験があって、艦これ面白いですよ~という話を仕事界隈ですると「一回アクセスしたけど入れなくて、それ以降やってない」であるとか「あれって全然入れないんでしょ」と言われるんですよね、始めてない人には。
ソーシャルゲームを作っている人間として「やりたい時にユーザが始められない、ゲームに入れない」というのはもう機会損失の頂点とも言える状態で、何をかなぐり捨ててでも改善しないといけない不具合だったりするのですが、艦これはそれをある種「ブランド価値」のようなものにしてしまっているんですねぇ……。
同じく「入れない」ではファイナルファンタジー14なんかもそうだったと聞きますが、そちらも大ヒットしております。
炎上とヒットは紙一重なのかもしれないですね。
【中村さんにみんな釘付け】
という感じで、さやわかさん一人による艦これ論が展開されたあと、米光さんと中村さんが登場します!
中村さんは、なんと手作りの赤城コスプレで登場!会場が湧きます!
ちなみに中村さん、普段はまったくコスプレはされないということで、この日はまさにスペシャルでした。
普段しない割には、前日に作ったとは思えないクオリティで、中村さんの艦これ愛が垣間見えた瞬間でした。
三人揃ったところで、中村さんの紹介は始まりました。
中村さんがまず、艦これが大好きだというところから。
手元にはなんと、艦娘早見表が。トークを円滑にするためでしょう、気合の入れようが違います。
そして話が趣味の方に進みます。中村さんはミリタリーが大好きということで、初めに映された写真は、購入したてのハンドガン(もちろんモデルガン)を持って、射撃場の前で微笑む姿。
次に映されたのは、迷彩服で完全防備……っていきなり飛躍しすぎですから!
そう、いまではサバイバルゲームをバリバリ楽しむところまで来ちゃっているそうです。
そして最後に映されたのは……。
戦車と2ショット。
まさに、どうしてこうなった!ですが、海上自衛隊訓練支援艦「てんりゅう」の一日艦長というのも、なんだか納得のお話なのでした。(その時の写真も見せて頂きました)
【会場の熱い艦これファン】
ひと通り中村さんの紹介が終わり、米光さんの紹介、そして三人揃ってのトークの始まりです。
ここでも、個人的ハイライトのみのお話になりますが……。
まず、会場の属性がすごかった。
今をときめく『パズル&ドラゴンズ』といえば、もはや子供から大人まで知らない人がいないという大ヒットタイトルですが、そのパズドラよりも、艦これをプレイしているユーザが多いという……。
ちょっと凄さが伝わらないかもしれないでの数字で言いますと、パズドラは2100万ダウンロードで、艦これの登録者数が120万人ですから、17.5倍ですね。
会場50人だとして、艦これユーザーは3人位で後はパズドラユーザーでもおかしくないわけで、非常に純度が高い艦これイベントだったわけです。
【艦これのUI/UXはイケてない!のに……】
米光さんの開発者としてのお話がやっぱり私には面白くて。
「艦これは親切じゃない」
そうなんです。ひじょーーに遊びづらいのです、艦これのデザインは。
「UIが、UXが」という話がよく職場で出るのですが、これはUI(User Interface)、UX(UserExperience、ユーザー体験)の略で、ここが優れていないともう、本当にクソゲーと言われてしまうのです。
特にソーシャルゲームはそうで、結局Webサービスの延長のようなところがありますから、「いかにユーザーがストレスなくプレイできるデザインになっているか」ということに尽きるわけです。
そのためには、視認性はもちろんのこと、分かりやすく、使いやすくアイコンやコマンドは並べられる必要があるし、こうしたら、次はこうしたいからこういう挙動をしてほしい、という部分も担保していかなくてはいけないのです。
しかーし、艦これは、です。
「なんでここでそのまま出撃できないの?一旦戻るのめんどくさい!」とか
「いや……ここって一括で選べるべきじゃない?」とか
そういうのがもう、本当に多いのです!
けして遊びやすいUI/UXじゃないんですよね。
しかし、売れている……。
これはもう、「売れちゃったから」という部分であるのかもしれないですよね。とも思います。
あんなに不便だと思っていたのに、今では直感的に体が動いている。
慣らされちゃってるわけです。
そもそも、最近のゲームがユーザーライクすぎる、便利すぎるのかもしれません。
特にソーシャルゲームはユーザーの顔色を伺うお仕事で、その点本当にエンタメというよりは「サービス業」な気もします。
先程も言いましたが、「Webサービス」だったんだろうなぁ、今までのソーシャルゲームって、と思うのです。
【ソーシャルゲームはリスクが少ない】
ユーザに親切すぎる、という点では、米光さんの「ソーシャルゲームはリスクが少ない」という言葉も考えさせられました。
艦これの有名な仕様の一つに「轟沈(ロスト)」があります。
これは、戦闘中に艦娘の、いわゆるHPが0になると、海に沈んで二度と帰ってきてくれないという鬼のような仕様です。
同じ個体がいくつでも手に入るので、二度と帰って来てくれないというのは少々語弊がありますが、手塩にかけたあの娘とはそれらは別なわけで、復活の呪文もリセットもない艦これの世界では、「自分的には別の娘」をまた一から育てないといけないわけです。
コンシューマーゲームだったら『ウィザードリィ』『ファイアーエムブレム』『風来のシレン』と、「死んだり終わり」な名作は数あれど、これは、ソーシャルゲームではなかなか出来ませんね。
コンプガチャ問題なんかもあり、「課金」という言葉がもはや悪の権化であるように言われてしまうソシャゲ界では、とにかく課金に絡むクレームは避けるべき対象なわけです。
もちろん運なので、一概には言えませんが、基本的に出にくいレアカード、数字で考えれば結構なお金がかかるわけです。
それがなくなったりしたら……。
艦これの戦闘は全て自動、運と数値で管理され、ユーザーに委ねられるのは「進むか、戻るか」位。
たった一瞬の判断で、もしくは凡ミスで、艦娘が轟沈する瞬間は本当に悲劇でしかなくて、心の痛み。
明確なリスクです。
リスクがあるということは、それがストレスに繋がるということ。
【ソーシャルゲームにおける「リスク=ストレス」】
ソーシャルゲームでは、なるべくこの「ストレス」がないように作られているように思います。
やはり、プレイの中心の一つである「課金プレイ」が大きいように思います。
ソシャゲはシンプルで、「お金をかけたらもっと楽できる、楽しめる」ものです。
逆を言うと、そういうふうに設計されていないとまずいのです。
ユーザーのプレイの妙、という比重は少なくて、お金をかけたら強くなるし、先に進める、はずなのに、それができないと
「お金かけたのに利益が得られなかった」と判断されてストレスにつながるわけです。
ちなみに語弊があるかも知れないので補足しておくと、「ユーザーのプレイの妙」はちゃんと機能していますよ。
簡単に言うと「無課金なのにやたら強い」「同じくらいお金勝てるのに勝てない」「上位ユーザーにはお金だけじゃ勝てない」という現象ですね。
意外と言われるかもしれないですが、運営は、パラメーターをしっかりと研究して考えているので、きちんと仕様や、すくみ関係を考察してゲームすると、ぜんぜん違うのです。
まぁ、ソーシャルゲームはそもそも、そうやってやり込む時間がないとか、そういうのは面倒だけどライトに楽しみたいという人達の間に刺さったわけですから、
「時間が無いからお金をかける、楽したいからお金をかける」というユーザーに対して、シンプルにメリットが返るようにするべき、というのはあるべき姿なのです。
とは言え、ゲームには難易度という普遍的な指標ありますから、「クリアできないストレス」はけしてなくなりません。
そこにかかる労力と、あるいはお金、というのはもう個人差にはなってきますが、結局、それに見合った見返りがあってしかるべきで、それが釣り合っていないと「不当なストレス」になってしまうよね、という話です。
その不当なストレスが、なるべくないようにと考えるのが運営側なのですが、「課金スタイル」があるがゆえに、コンシューマーゲームより神経質になるのがソーシャルゲームな気がします。
ストレスが何に繋がるかというと、クレームはもちろんですが、ユーザーの離脱に繋がります。
ソーシャルゲームは「基本無料」なわけで、ユーザーがやめようと思ったらその瞬間にやめられてしまいます。
ユーザーに課金してもらえないと成立しない世界ですが、もし課金してくれなくても、いてくれるだけで財産になるのがソーシャルゲーム。
何故って、ソーシャルゲームって一人で完結するものでないので、ある程度人がいないと面白くないのです。
そして、いてさえくれたら、いつか課金してくれるかもしれない、という可能性は残る。
でもやめられたら、何も残らないのです。
そして、一度やめたユーザーはほぼ戻ってこないというのも、ソーシャルゲームの面白いところ。
先ほどお話したUI/UXもそうですが、ソーシャルゲームのユーザーはちょっとしたストレスで辞めていってしまいます。
課金が絡むストレスなんて致命的です。
ゲームに入れないのはもっての外です。
なので、ストレスフリー、リスクの少ない作りになっていくものなのです……。
じゃあ艦これはどうして大丈夫なのか!というお話なんですが、そもそも本当に大丈夫なのでしょうか?
それについてはもっと別の検証が必要な気がしますし、もはや違うゲームであるということなのかもしれません。
それは別の機会に譲るとして「ソーシャルゲームはリスクが少ない」は経験則と合わさって納得した、ということなのでした。
【艦これは「ソーシャルゲーム」?】
艦これは果たして「ソーシャルゲーム」なのか、というお話。
「友軍艦隊」という、他のユーザとお友達になれる?昨日はまだ閉じたまま。
新規登録の抽選による、友だち招待の一時停止。
演習で他ユーザとバトルはできるが、見え方としては一方的。
戦歴表示で一応ランキングは見れる。
という感じで、挨拶コメント的なお決まりの機能もないですし、繋がっている感は少ないですよね。
そこで、米光さんが、(さやわかさんだったかもしれません)
「昔ゲームセンターにドルアーガの塔が会った頃、攻略情報を書くノートがあった。誰が書いたか知らないその情報を元にプレイした」
という経験を元に、艦これは
「Twitterや艦これwiki、まとめサイトや掲示板を通した攻略情報のやりとりがある。それがソーシャルじゃないか」
というお話に展開。
艦これは、先ほどのUI/UXだけではなく、隠しパラメーターが多い「不親切なゲーム」でもあると言われています。
そして、いろんな人がその隠しパラに挑み検証を重ね、日々艦これwikiが更新され、掲示板やTwitterでは情報のやりとりが成されています。
このやりとりが、艦これがヒットした要因の一つとも言われていました。
私は、個人的に毎日タイムラインに流れてくる艦これの二次創作イラストを楽しみながら、いろんな人達の交流を横で見ていたりするわけですが、確かにDMMで展開している艦隊これくしょんというゲームの機能内では交流がなくても、その外に溢れだしたこの人々の繋がりは、明らかにソーシャルでしかないなと思います。
最近は昔ほど、友達との繋がりが強調されないゲームが増えてきましたが、これを見ていると、やっぱり人と人の繋がりってすごいなぁ、と思ってしまうわけです。
【質問タイムで終了】
その後は質問タイム。2-4(※)は結局どうやったらクリアで来るんだという、米光さんからの逆質問もあったりして、1時間半のイベントはきっちり終了。
懇親会に出たかったけど、次の約束があったので席を経った私でした。
※艦隊これくしょんの出撃マップの「南西諸島海域 沖ノ島海域」のこと。序盤の鬼門と言われている。
【最後に】
ほとんど覚えてない!なんて思っていたのに、この量になってしまいました。
やはり艦隊これくしょんの魅力はすごいなぁ、と思います。
だいぶ持論も入りつつのイベント体験記でしたが、別枠で艦これについて思うことはまとめないとなと、改めて決意したのでした。
まだ全然遅くないので、あなたも艦これ、プレイしてみてください!
「入れない」という方は、こちらを御覧ください!
→【登録・抽選ってどうしたらいいの?】「艦これ」始め方ガイド
以下、綾瀬の、綾瀬による、綾瀬のための今後の(きっと来年になるであろう)執筆予定。
やっぱりこのメニューは腰を据えてかかないとダメだと、ひとつ書いてみて思った。。。
・東浩紀さんのフクイチ本のイベントへ行った感想。
・家入一真さんの「もっと自由に働きたい」の感想の続き。
・津田大介さんの「メディアの現場」の感想。
・さやわかさんの艦これテーマのトークイベントの感想。 →done!
・昔流行った「100人の村」について、フォロワーさんと約束してる記事
・森見登美彦さんの「夜は短し歩けよ乙女」の感想。
・そろそろ艦これについて一度記事にしてみようかな。
・自炊代行使ってみた!→データが入稿されました!
・家入一真さんの「こんな僕でも社長になれた」の感想。
・不可思議くん、について思ったこと。
・バカテスも読まなきゃね。→新刊届いた!
・コンプティーク読んでみた感想。
・村上祐一さんの「ゴーストの条件」を読んだら感想。
・ソーシャルゲームと二次創作を考察する
・「鎮守府のすすめvol.2」買いました!
ピンバック: CRUNCH MAGAZINE始めました、というお話。 | あおいはる。