敬愛する大塚先生こと、大塚英志と、個人的に最近注目している東浩紀さんとの対談本。
発行は2008年8月、新しいとはいえませんが、その文脈はけして古くなく、学び取れることは多かったと思います。
とはいえ、この手の本は最近読み始めたということもあるし、私自身の脳みその問題もあるのですが、一瞬で咀嚼し理解できるかというとそうは簡単にいかず……。
電車通勤の間に、ちょこちょこ読んでいたのではまったく頭に入ってこず、まとまった時間を見つけて、今回もう一度頭から読み直しました。
最初の方は、二度目ということもあり、そこそこ理解できたのですが、後半はまたもや頭がおっつかず、正直なところ理解度は6~7割あればいいほうかなぁ……というところです。
お恥ずかしい限りではありますが、これは根気よくもう一度など読む必要があるかな、と思っています。
そんなお粗末な状態ではありますが、貴重な読書体験でした。
そろそろ、お話を本の内容に移したいと思います。
この対談集には、二◯◯一年に収録された第一章、二◯◯二年に収録された第二章、二◯◯七年に収録された第三章、そして二◯◯八年に収録された終章の四つの対談が収録されている。
『リアルのゆくえ おたく/オタクはどう生きるか』―東浩紀+大塚英志― あとがき より
実に最初の対談から発刊まで7年が経過しているのです。
読んでいると時々ハラハラしてくるほど、二人の言説はすれ違います。なんだか冒険小説でも読んでいるのかと思うほどで、「大丈夫かな、これは無事に着地するのだろうか。このままどういう展開になってしまうんだろうか」と思う瞬間が何度もありました。
おそらくそれは大塚先生の論法なんだと思うけれど、東さんの言葉に、「でも」とひたすらにクエスチョンを投げ続けます。
東さんも「いやそれは違うと思います」と何度も何度も言うし、「違わないんじゃないの、じゃあどうなの」と大塚先生も一歩も引かない。
なんだかこれ喧嘩してるんじゃないかという気がしてくるくらい。
でも、東さんは「大塚英志は、僕がもっとも尊敬する同時代の評論家のひとりである。」とあとがきで述べているし、「ぼくの文芸系/オタク系評論の目標の目録には、じつは大塚英志の再評価というささやかな項目が入っている。」とすら言っているのである。
それに対して大塚先生は、すごく彼らし言い回しだけれど「認めている」と言っていて、かつ「分かってあげないというスタンスをこの後もずっととっていく」という言葉で、今後も面と向かって付き合っていくよということを言っていると私は取りました。
そういう関係性だからこそ、一度関係が途切れそうになっても(あとがき参照)最終的にこの討論は一応のまとまりを見せ、この本が私の手元にあるんだと思います。
7年の歳月には、とても意味があると思うのです。
ええと、この本の主題って……。おたく/オタク、でしたよね?
……まったくそういう印象が残っていないんですが笑
なんというか、大塚先生が、「東浩紀はこの状況でどういう言説を作っていくのか、それについてどう責任を取っていくのか」ということを、ひたすらに問い詰め続け、東さんがそれをかわし続ける(かわしているわけではないんだけど)という構図の印象しかないのです……。
特に第三章ですね。ここには第二章から5年の断絶があり、あとがきを読むとその章を通しての大塚先生の「苛立ち」の理由がちょっと分かる気がするのですが、とにかく大塚先生が東浩紀にイライラしてる。
なんでそんなに苛ついているのか、と東さんが何度か聞いてしまうくらい。白熱した章です。
私は、大塚先生が好きでこの本を買ったわけですが、これは東さんを好きな方に読んで欲しい本だと思いました。
そんなことを言わなくても、これは形としては東さんの本なので、余計なお世話かもしれないのですが。
大塚先生は結局「自分は東浩紀が何を考えているか知りたい、理解したい、だから話がしたいんだ。逃げないで答えろ」みたいなスタンスで、納得をしようとしてる、そんな感じがしました。
そして、大塚先生って7年間であんまり変わらないんです笑
でも終章で自分で認めるように、東さんには「変化」があるのです。
なんというか、大塚先生というフィルターを通して、その東さんの「変化」を楽しむことが出来る本なのではないかと思いました。
お二人の高尚な議論の内容については、申し訳ありません……。
ここでしっかり語れるほど咀嚼しきれていない私がいるので、敢えて触れません。
ただ、上記のような、東さんの思想の変遷を見ることもできるし、東浩紀という思想家の言説と対比することで改めて見えてきた、大塚英志の人間像というものにも触れることが出来ました。
大塚先生って、人を食ったようなところがあるし、自分の以前の経歴や言説を、平気で後になってぶっ壊したりするなんともクセだらけ、かつ毒を吐きまくる人なわけですが、実はすごくピュアな信念を持っていて、希望も持っている人な気がしました。
……と書いて、そういえば以前見た2012年発行の、宮台真司さんとの本「愚民社会」にまつわるニコ生での、大塚先生の語りっぷりを思い出しました。
もう今は、希望持ってないかも……。そちらも改めて見直す価値あり、ですね。
以上、拙い感想になってしまいましたが、東浩紀・大塚英志に関心のある方には是非読んでみてほしい一冊でした。
私は、評論でオーバーヒートした頭を、小説で癒やしにかかります……。
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